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◆顎関節症の症例報告
[症例1. 松●●子 23才]
| 主訴 |
“15才の頃より、口を大きく開けにくい、左の顎がたびたび痛む |
| 経歴 |
11才のとき、首がおかしいということで牽引治療を受ける
中学のとき、口が1週間程開かなかったことがある
17才のとき、前十字靭帯断裂
現在も右首筋、右肩および肩甲部が痛む、ふらつきがある |
| 所見 |
BP 右上腕106-67(69)(61ml)、左上腕105-62(70)(58ml)
左片足立ち ふらつき;左回内・回外運動 遅い
VA ratio(眼底の静脈と動脈の径比) 右2.5:1、左2.0:1
左顎関節開口時にクリック
頭蓋の内圧変動触診で左前頸部に緊張のスジが認められる
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| 印象 |
話をしているとたいへん几帳面な性格、細身で体力がない印象
ひんぱんに咳ばらいをしているのが気になった。
頸部や脊柱は一般的な緊張もみられるが、特に顕著な問題点とならず |
| 治療 |
前頸部の緊張のスジに注目し、膜系の緊張を緩和するように身体呼吸療法
顎関節と頭蓋、頸部、脊柱の緊張をリリース
左脳偏重の傾向(コンピュータモニターの位置による左脳刺激、論理思考的)と、右脳の活動低下(運転の後にふらつき悪化)があるため、刺激は左方向から脊椎のIa求心神経を刺激する方針とした。
深い呼吸を意識させた。 |
| 予後 |
症状の改善が徐々にみられ、顎関節部や前頸部の緊張が解消
リラクセーションがみられるようになり、呼吸運動も深まる
初診から2年が経過、月一回の経過観察と治療で症状の再発なし。 |
[症例2. 秋●●子 65才]
| 主訴 |
右顔面、右首筋、右肩が痛む
咬合治療と合わせての全身的な治療を希望 |
| 経歴 |
1年前に右足をひねってから膝に水がたまる |
| 所見 |
BP 右上腕144-106(61)(58ml)、左138-108(56)(37ml)
右143-109(69)(55ml)、左136-114(70)(38ml)
Corenal reflex Lt(++) Rt(+)
右Palate paresis slightly、瞳孔反応 (陽性)
右顎部と、右頸筋が前後で緊張 |
| 印象 |
治療を進めていく過程で左半球機能低下の問題が明らかになる
心肥大(急に息苦しくなる) |
| 治療 |
上部頸椎を中心に顎・頭蓋部の緊張緩和(環椎後頭関節がポイントなった)
右T4,5肋骨の吸気障害の治療
右下肢の足関節、膝などの調整
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| 予後 |
咬合治療とあいまって、頸筋、肩の痛みの症状改善得られる
左の循環拍出量がなぜ少ないのか疑問に残るが経過は良好とのこと |
[症例3. 宮●●ぶよ 61才]
| 主訴 |
“咬合治療を始めてから、過去に打撲した左肘と、左肩甲間部が古傷のように痛みだした。” |
| 経歴 |
多くの不定愁訴を訴え歯科医師によって咬合治療を受けていたが、古傷が表面化したような症状が再現したため、カイロプラクティック治療との連係が必要であると、歯科医師にすすめられて来院。 |
| 所見 |
BP 右128-98(62)(49ml)、左131-98(60)(57ml)
右136-102(50)(46ml)、左138-104(51)(52ml)
右片足立ち ふらつき、回内・回外 両側とも遅い
左Corenal、左exophoria、左Palate paresis slightly
左顎関節に異常感(内方偏位)と左前頸部の緊張スジ
T2 ribの吸気障害
(Weberテスト)骨伝導 右耳が聞こえにくい
ブラインドスポット 左眼が固定しない
瞳孔の反応 不明 |
| 印象 |
神経学的な検査では左大脳半球機能低下
頭蓋触診により、左顎関節の不整合から生じる前頸部の膜系の緊張スジと上部肋骨の吸気障害
右の拍出量の低下については不明
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| 治療 |
顎関節を中心に膜系のリリース |
| 予後 |
早期に症状の改善、1年後の経過では症状再発なし
ただし左側の顎の緊張があるとのこと(歯科医師からの指摘) |
顎関節機能障害についての考察
(1)顎関節症を訴える患者は一般に几帳面であったり、緊張しやすいタイプの人達である印象がある。そのため神経質的で筋緊張が強く、呼吸が浅く頭蓋などの内圧変動が乏しく、側頭部が収縮ぎみに歪んでいる側で側頭骨や蝶形骨の不整合感が触診できる。
こうした頭蓋の不整合があると顎関節内の顆頭の位置関係にアンバランスをもたらし、その関連する筋膜に緊張を生じさせている。すなわち、顎関節の内方から、たぶん咽頭収縮筋や、頸長筋と斜角筋に関わる深頸筋膜に異常な緊張をもたらしているものと思われる。
(2)下顎の偏位と上部頸椎について明らかな関係は認められなかったが、顎関節周辺に緊張がある場合に、環椎の前方への回旋がともなっている印象がこれまでの経験から言える。
(3)顎関節の機能障害はときには神経学的な障害をともなっていることがあり、角膜反射など、脳神経の神経検査で認めることができた。三叉神経は、第1頸神経の前枝的な意味合いがあり、頸神経との密接な関係には疑いはない。
前庭神経核はもちろんのこと、頸椎のアジャストメントが三叉神経を介して顎関節に関わる機能にも大きな影響を及ぼし得る。カイロプラクティック神経学では、脳はオーケストラの演奏のように各部が調和を持って並列的、時系列的に協働していると考えている。
そのため左脳と右脳の相対的なバランス関係をはじめ、神経系のネットワークの相互の関係を改善する方向で治療を進めている。顎関節の機能障害も、そうしたネットワーク上の障害、すなわち感覚処理における混乱に起因することがあるであろうとみなされる。
平成14年6月 日本全身咬合学会主催認定研修セミナー
カイロプラクティックからみた顎関節の機能障害について
大場 弘 DC, DACNB(米国カイロプラクティック連盟認定カイロプラクティック神経学専門ドクター)
CHIROPRACTIC VIEW OF THE TMJ DYSFUNCTION HIROSHI OBA, DC DACNB
[概要]
カイロプラクティックの立場から顎関節の機能障害について考えるにあたり、平成14年4月から数月間にわたって、カイロプラクティック治療を受けている患者について、頸筋の緊張と、上部頸椎の変位そして下顎の位置関係と頭蓋骨の歪み感などを触診によって調べてみた。
顎関節になんらかの機能的な異常をきたしている患者においては、側頭部から顎関節にわたる歪み感だけでなく、顎関節下の咽頭部から前頸部にわたって、線維性の緊張感が触診されることが多かった。このとき、同側の関節内で下顎頭は、共通して内方に偏倚している特徴があった。しかも同側の後斜角筋の緊張が著しいことが目立っていた。
下顎の位置関係は、ほとんどのだれでも相対的な偏りが認められ、顎関節の機能的な障害に直接関与するものではないようである。一般に下顎頭は後方へ偏倚していることが多く、このとき環椎(C1)が同側で前方への回転していることがめずらしくなかった。
顎関節の機能的な障害においては、神経学的な混乱があるようであり、簡単な神経学的な検査によっても異常が認められる。カイロプラクティックの治療は、脊椎を中心に正しく刺激を与えることで、神経系の情報処理の健全化をもたらすことが期待できる。
Abstract The author examined chiropractic patients on their stomatognathic
system, and listed palpable findings such as neck muscle tensions,
upper cervical irregularities, mandibular displacements, cranial
stress and myofascial tension during March ミ May 2002. Those who
had the TMJ dysfunction (pain, click, irregular motion) showed the
craniopathic stress as well as the tense myofascial fibro-band along
the pharyngeal constrictor and posterior scalenus muscle. The mandibular
condyle are found to be displaced medially in the fossa on the dysfunctional
side. We could find the mandibular displacement in any patients
even if they have not the TMJ dysfunction. The mandibular displacement
is not directly related to the TMJ dysfunction. The Atlas (C1) tends
to be rotated anterior on the TMJ dysfunction side. On the chiropractic
standpoint the TMJ dysfunction seems to be involved in the disturbance
of nervous system. Because they showed abnormal neurological findings
in the cranial nerve examinations. Chiropractic adjustments stimulate
nervous system, and enhance the neural reprocessing, if supplied
appropriately.
[ 謝辞 ]
今回、石川達也会長には全身咬合学会認定研修セミナーにおいての講演の機会を与えていただき深く感謝を申し上げるしだいである。また頸筋との関わりついて話しをしたらいいのではとアドバイスをいただき、あらためて頸筋との関係について考える貴重な機会となりました。このセミナーには全国から二百名を超える歯科の先生方に参加いただき、カイロプラクティックの役割についてお話をさせていただいたことはたいへん意義あることと喜んでいる。全国で歯科の先生方とカイロプラクティック治療に携わる方々がおたがいに協力し合い、苦痛で悩む患者により良いサービスが提供できるようになることを願うものである。
参考文献 大場弘、第一次呼吸機序の研究:頭蓋内圧変動の測定から、日本カイロプラクティック徒手医学誌、Vol.1, 2000 Knutson
GA, Jacob M. Possible manifestation of temporomandibular joint involvement.
JMPT 1999;22:32-7 Joe Alcantara et al., Chiropractic Care of a Patient
with Tempomandibular Disorder and Atlas Subluxation, JMPT Jan. 2002,
Vol.25-#1
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