身体機能の連関性の症例

[症例:身体機能の連関性を示す一症例]
50代の主婦

今回(H16.830)来院した理由は、布巾などを絞るときに軽い違和感が左手首にあるので診て欲しいということであった。とくに痛みが出ているということではないらしい。 先ず手首を持って、身体波動を頼りに緊張したスジや、体液の流れに問題がありそうなところを追いかけることから始めてみた。手首の背側から左肘へ緊張しスジがみられ、そして左肘から肩へとつながる異常感を追ってみた。すると肩の背側から上部肋骨への緊張の連なりがあることがわかり、第四胸椎周辺の肋骨の動きが吸気で十分な拡張を起こさないことが触診できた。これは胸椎に問題があるのではなく、心臓を覆う肋骨そのものが運動制限をきたしていることが明らかであった。

この所見を患者さんに話すと、人間ドックで胸膜の肥厚を指摘されているが、とくに問題はないと言われているとのことであった。さらに私が、このように吸気で十分な胸郭の拡張が起きないと心臓に負担がかかるはずと話すと、さらに彼女は「心臓が虚血する傾向が診られる」という検診の所見を思い出し、その意味がわからずにいたとのことであった。さらに私が、脳に十分に血液が供給されないとふらつきなどが起こるはずであると話すと、よくそうしたことがあると言うのである。耳鳴りはないかと尋ねると、ときどき違和感をおぼえることがあるが、はっきりとした症状として出ていないようであった。 布巾を絞るときの手首の違和感から思いもかけず、様々な不定愁訴が次から次へと明らかになり、しかもそれらの症状が連関して起きていることを互いに実感させられる展開となった一場面であった。

このように身体にあらわれる様々な症状はけっしてバラバラの問題ではなく、それらの発症にはなんらかのシナリオが描けることが少なくない。もっとも根本的な問題をいかに明らかにできるか、問診と触診による進め方が重要となる。ちなみにこの患者さんには、呼吸運動を深くし、肋骨の動きを改善させるためのエクササイズとしてプールでの浮き沈みを勧めてみた。息を吐きながら脱力し、プールの底まで沈み込み、そして息を吸いたくなるまで十分に待って浮き上がる運動を繰り返してもらうことにした。水の圧力と身体呼吸運動の促進によって胸郭の柔軟性を高め、心肺機能の改善が目的となった。最初の手首の違和感という愁訴は、このときどこかへ行ってしまった。

 

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